みぢかを機能で考える

ISIDエンジニアリング・機能エンジニアが機能で考える開発について紹介します。

マウンテンバイク(MTB)のライディングポジション再考

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    私には三十年来の付き合いになるMTB仲間がいますが、私の家庭の事情で彼らとも少々つき合いが悪くなり、サマーシーズンのMTBフィールドに行く機会も減ってきました。数年前まではレース出場の度に会場となるスキー場に行っていたのです。 今は、レースからは退きましたが、その爽快感からMTB/ダウンヒル(以下、DH)は続けています。

 

 最近のDHバイクは、スピードアップと操縦性向上のため、次のような構造や材質が主流になりつつあります。

  • フレーム素材:アルミ → カーボン
  • サスペンション(サス):コイルスプリング → エアースプリング
  • ホイル径:26インチ → 27.5インチ
  • タイヤ幅:2.5インチ → 4インチ

特にホイル径が大きくなると、ホイルの交換だけではなく、フレームや、サスペンションまで交換することになります。どこの業界でもスタンダードを変更することは、機能水準の向上を狙ってのことだとは思うのですが、なにやら業界ぐるみの何か別の意図を感じざるを得ません(笑)。

 

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    そんな中でロートルダウンヒラー(私です…笑)は26インチ、アルミフレーム、コイルスプリングという仲間うちでは「旧車」と呼ばれるスペックでコースに出ています。サスのセッティングだの、ブレーキの調整などしてコースに出るわけですが、最近なかなか乗り心地というか取り回しがしっくりこないことに気がつきました。

    タイヤのエアー圧、フロント(Fr)/リア(R)サスの圧縮側(コンプレッションといいます。以下comp)、伸び側(リバウンドといいます。以下reb)のダンピング特性は走るごとに変更し、最大ストロークの記録もとりますし、私のインプレッションも残し、チェックしています。

    しかし、なかなか思うようにならないでいました。特にコースでハイスピードのガレ場の部分での衝撃吸収を何とかしたかったのですが...。

(注:ガレ場とは普通の道とは違い、岩壁や斜面から崩落した岩クズが辺り一面に散乱して堆積している場所のこと)

 

 そんなことで悩んでいる中、バイクショップで知り合いのエリートライダー(彼は50歳を超えているが日本のトップ50に入っているのです!)から、

 

「ライディングポジションがあってないのでは?」

 

との一言があり、以下のサジェスチョンをもらったのです。

  •  ハンドルステム(フロントフォークとハンドルの結合部)を5mm短くし、位置を20mm上げる
  • ハンドルの位置を20mm上げる
  • サドル高さを30mm下げる

    つまりハンドルグリップの位置を40mm上げて、5mmライダー側に寄せ、尻の位置を30mm下げる。コース走行時にライダーの重心がバイクの重心上にくるようにするのが狙いです。

 

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    また、これまでハイスピードのガレ場では腕への衝撃がかなりきついと感じていました。これはポジションが前のめりになっているため、腕への荷重分担が足側より増えている状態であったことによるものと思われます。

 

    早速、ハンドルのポジションを変更して、コースを走ってみると、確かに乗りやすく、走行時の安定性が増したように感じられました。

 

 また、ポジションが前傾していたため、トータルの重心がFr側にあり、Rrサスを有効に使える状態ではなかったと思います。ポジションの変更により、この点も改善できました。

   更にサドルの位置を下げたことにより、重心移動しやすいポジションとなり、走路の傾斜度合いによって自分の重心とバイクの重心を意識しながら、腕と足でより衝撃吸収ができ、ブレーキング時の荷重移動に対応しやすいポジションをとることができるようになったと思っています。

 

 先のエリートライダーは現在ではサスのセッティングよりむしろ、ライディングポジションの調整に多くの時間を費やしているとのことで、数mmのポジション変更で走りが激変することも珍しくないらしいです。

 

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 後日、サドルも下げて別のコース(斜度のゆるいコース)を走ってみると、確かに安定性が向上していることが確認できました。

 

    またポジションの自由度が増し、コースの状況に応じたポジション取りできるようになりました。この自由度向上はコースの変化、あるいはコーナー曲率、バンク角などに応じた重心移動を自由にできることを意味し、それに合わせたライダーとしてのトレーニングも必要となりました。

     このポジション取りのためには、脚力をかなり使うようになり、これまで先の斜度のゆるいコースで筋肉痛などなったことがなかったのですが、今回は大腿四頭筋の内側広筋がひどく痛みます(笑)。

 

    重心のもつ意味、その機能を改めて認識できた出来事でした。MTBに限らず、 どんなスポーツでも重心の使い方は重要だと思います。特に道具と組み合わせて重心移動のあるモーターサイクル、スキー、スノーボード、サーフィンなどはみな同じことが言えるのではないでしょうか。

 

 

傘の所持数は日本が世界一

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9月になって幾分涼しくなりました。今年の夏は、雨の日が多く、またゲリラ豪雨も各地で発生していますね。「傘持ってないよ!」というときもあったでしょうけど、傘を持っていても役に立たないほどの豪雨もあったでしょう。 今回は「傘」の機能を考えてみましょう。 夏は日傘も大活躍ですが、ここでは雨傘について考えてみます。

 

 

傘の目的を考えると、

1)「雨の日の外出時に体を濡らさない」

2)「雨が止んだら閉じて邪魔になりにくい」

というようなことが出てきます。

 

このうち、本質的な目的は、あきらかに1)ですね。2)は付加的なものと思われます。

 

これは昔の状態を考えるとわかるでしょう。日本で「番傘」のようなものができるもっと前には、「かさ」と言えば、頭からかぶる「笠」でした。「かさ地蔵」がかぶっているもの、というとおわかりでしょうか。

この笠をかぶり、蓑(みの)を羽織って雨をしのいでいたのです。

 

この時の「笠」の機能は、「雨が(特に頭に当たるのを)防ぐ」というものであり、上記の目的の1)だけに対応していました。

 

 

そのうちに、時代が下ると

「雨が止んだときに笠や蓑がじゃまになる」とか、

「蓑や雨合羽などを着ないで、雨の日もスマートに歩きたい」という

要求がでてきたものと思われます。

 

それに対応したのが「(普段着を濡らさないほどの)大きい傘が、使用後はコンパクトに閉じられる」という付加機能であり、それは上記の目的の2)に対応したものです。

この機能を実現するために、骨の構造を工夫し中心の棒の上をスライドする機構(下ろくろ)を設けたということです。

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(図はWikipedia「傘の各部の名称」より)

 

 

このように、要求(ニーズ)が変化(高度化)すると、それに対応して機能を変化させた新しい製品が出てくる、ということです。まさにエジソンの言葉通り、「必要は発明の母」ということですね。

現代になると、さらに「使わない際にはカバンに入れたい」とか「片手で開きたい」という要求が出てきて、それに対応する「折り畳み傘」や「ジャンプ傘(ワンタッチ傘)」というバリエーションが生まれていますね。

 

 

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傘には和傘と洋傘という分類があります。 最近では一般的に使われているのは洋傘ですね。

和傘の開閉の仕組みは日本で独自に考えたものらしいので、洋傘とはまったく別に生まれたということになるのに、仕組みがとても似ているのが面白いですね。

ただし、洋傘は骨を外側へ開く力と布の張力とをバランスさせることで形を保つのに対して、和傘は紙の強度に頼らずに骨だけで持たせるために、骨の本数が多くなっています。使用する材料が違うので、機能を実現する方法が少しだけ異なるということになります。

 

タイトルにも記しましたが、一人当たりの傘の所持数は日本が3.3本で世界一だそうです(2014年のウェザーニュース社の発表から)。自宅や職場・学校の傘立ての状況をみるともっとありそうですが(笑)。傘の機能は日本人にとっては生活の中で大事な要素となっているに違いありませんね。

 

これから傘を使う際に、先人の知恵による構造を、少し眺めてみてはいかがでしょうか。

 

早実・清宮選手や広陵・中村選手は金属バット不要!?

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夏の甲子園というと殆どの方が高校野球のことを思い浮かべられると思います。正式には全国高等学校野球選手権大会というようですが、(ちなみに春は選抜高等学校野球大会)今年の夏で99回、来年は100回目の節目を迎えます。

 

冒頭、名前を出させてもらった両選手はいずれもホームランで話題をさらった選手です。清宮選手は残念ながら今年は甲子園にはいけませんでしたが…。

 

ホームランといえば、今大会は過去最高のホームラン数となり、68本ものが出たとのことです。

高校野球といえば金属バットを使っています。木製のものと比べると反発力が大きく、定性的には飛距離は伸びる方向=ホームランがでやすいといえるでしょう。

 

金属バットが高校野球に導入されたのは1974年だそうです。但しその年から急にホームランが増えたわけではありません。そのころは大会通算で10本余りだったようです。

当時とは体格・体力も違うでしょうし、技術も上がっているでしょう。甲子園球場ラッキーゾーンが廃止されたときはさすがにホームランは減ったようですが、今やそんなことは関係ないぐらいまたホームラン数は増えてきました。

 

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こんなにホームランがでるなら金属バットはそろそろ止めたほうがいいのでは…?と思ってしまいますが、ちょっと待ってください、そもそも何のために高校野球大会では金属バットを導入したのでしょうか。

 

木製はどうしても折れてしまうので、買い換えると費用がかさむ、負担を軽減するために導入をしたようです。プロとは違いますから、経費はより抑える必要がありますよね。

 

金属バットは木製バットと比較すると以下のような特徴があります:

  • 芯がない、というより芯が広いというべきなのかもしれませんが、打ってボールを遠くに飛ばすことの出来るスイートスポットが広い。
  • 折れない(正確には破損・変形しにくいというべきでしょう)
  • 吸収したエネルギーをあまりロズせずに、反対向きの運動エネルギーに変換する効率が高い(減衰が小さい)
  • 軽い

 

折れないバットを構成しようとしたら、結果的にその材質と構造により遠くへ飛ばしやすいバットになってしまったということなのでしょう。

 

プロでは金属バットは試合では使いませんが、試合前の練習で選手が使っているのをみたことがあります。  キャンプでは技術を磨くので使わないでしょうけれど、試合前はウォーミングアップなので、バットを折りたくないって言うことなのかもしれません。

 

プロの場合は、技術もパワーも更に高いレベルにあるので金属バットにすると、遠くへ飛ばしやすいということが、ホームラン増加、野球の質を変えてしまうとか、打球のスピードが上がりすぎて、危険度が増すとか(特にピッチャーの場合はよけられない)いう問題が発生しかねないようです。

また、木のほうがしなりとか、形状の微妙な調整により、選手にとってより扱いやすいものにできるのかもしれません。

 

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バットはピッチャーが投げた球を打ち返す道具です。それはプロも高校野球も変わりません。しかし、打ち返すために必要とされる機能を「ボールの運動エネルギーを受け止め、それを逆向きの運動エネルギーに変換する」とすると、人間の手、腕、体を含めて、如何にその機能を高いレベルで実現するのかが、バッターとしての技術と言えそうです。そして

  • プロの場合は基本機能を如何にうまく実現するのか、そこに重点がおかれる
  • 高校野球では、基本機能を容易に一定のレベルにして、その基本機能を継続的に維持していくことに重点が置かれている

といえそうです。

このように同じ機能でも、目的や機能に求められる水準の違いにより、材質や構造がきまってくるのです。 決して金属製のバットを作りたかったわけではないと思っています。

今は金属ですが、木製と同じような特性をもつ、構造や材料が出現してくれば、そういうものに変わってくる可能性があるのでしょうね。

 

ところで、今回、金属と木のバットの機能の話をしましたが、モノの話をする時に、忘れてはならないのがライフサイクルの観点だと考えています。 材料から加工、組み立てを行いモノの形を作る、用済みになったら、そのモノを自然に帰すことが出来る形で廃棄する、こういったプロセスの中でエネルギーを如何に有効活用するのかという視点です。

金属のバットのほうが、材料・加工・廃棄にエネルギーを使いそうですが、木のバットは折れるので材料・加工・廃棄のサイクルは速そうですね…。

地球に優しいのはどっち?

 

同じ映画なのになぜこんなにたくさんの種類が?~ディレクターズカットの功罪

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DVDやブルーレイディスクをメディアとした映画やドラマ作品を買うと、ほとんどの場合「映像特典」がついてきます。予告編集だったり、メイキングだったり、製作者のコメントだったり、NG集だったり、未公開映像だったり、果ては別エンディングまで付いていたりします。

 

その中で今回私が話題にしたいのは「ディレクターズカット」というものです。要するに未公開映像を本編に加えて、劇場公開版より長い尺にしてDVDやブルーレイディスクをメディアに販売するというものです。ディレクター=映画監督ですから監督が本来やりたかった編集のバージョンということでしょう。

 

ディレクターズカットの機能とは何でしょうか?

 

  1. 商業的理由(上映時間や観客受けのため)により削除せざるをえなかったが、本当に監督として作りたかったバージョンを是非見てほしい、という監督の自己顕示欲を満たす。
  2. 劇場で見た観客が、DVDやブルーレイを買いたくなるようなモチベーションを与える。
  3. 映画のファンが別バージョンを是非見てみたいという好奇心を満足させる。

 

おそらく全てでしょうけれど、一つずつみていきましょう。

 

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まず1ですが、個人的にはこのようなことはあってほしくないですね。プロデューサーともめたとかの内幕は正直見たくも知りたくもないので。(小ネタとして興味はあるけど。)

世の中に商品として送り出すのですから、製作者は100%とまではいかないにしても、芸術作品である以上は、それなりの納得感・満足感・達成感をもった作品を作ってほしいものです。

 

いろいろディレクターズカットを見てきましたが、やはり劇場公開版が一番シンプルでテンポよくまとまっている場合が多いと私は思っています。

 

また、ディレクターズカットによっては、どこが増えたのか気付かなかったり、劇場公開版と何が違うか分からなかったりして、ディレクターズカットって、あまり意味がないのでは、とも最近思い始めています。

 

実際、劇場版があくまでもオリジナルであり作品として優れていて、ディレクターズカットはオマケでしかないと語っている監督もいるそうです。

だとしたら長い時間かけて本編含めて見るよりも、映像特典として未公開映像だけオマケとして付いていた方が視聴者としてはありがたいのではないかと思ってしまいます。

 

 

つぎに2、3の機能ですが、以前「限定品」の話題の時にも書いたとおり、ある意味DVD・ブルーレイディスク版を買わなければ見られない、という希少価値的な側面もあり、購買意欲をそそるモチベーションとしては意味があると思います。実際同じお金を払って100分の劇場公開版を買うより、110分のディレクターズカットを買った方が10分お得感はあります。実際に私も「オマケ」のついた後者を選びます。

 

でも・・・されど10分・・・です。

 

純粋にその映画のファンで、いろいろなバージョンを見ることを楽しみにしている人、要するに3の機能を楽しみにしている人ならいいのですが、単純に数字を比較して「10分多いから」で選んで本当にいいのだろうか、と考え始めました。

 

上記の通り劇場公開版の方がまとまっているケースが多く、その場合、追加10分は「オマケ」ではなく「蛇足」になります。要するに不必要なもの、邪魔で余計なものです。

 

有限で時間的制約のある命を持つ人間にとって、その無用の10分を使う余裕はあるのだろうか?ひょっとしたら他のことをした方が有効なのではないだろうか?と年齢を重ねてきてしまった筆者は思ってしまうわけです。(若い人は考えないでしょうね)

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追加10分は「有効なオマケ」なのか「時間の無駄」なのか。 今後は、DVD、ブルーレイディスク版を買う時はその機能が持つ、自分にとっての価値をじっくり考えてみたいとることにします。

 

P.S

価値を考えるのに20分迷うとしたら、追加10分を見た方がましかも・・・

 

日本のトイレは日本人の機能要求の高さの象徴?!

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日頃はあまり話題にならない(しない)ものですが、毎日必ずお世話になっているものがあります。

そのうちの一つ、今回は「トイレ」の機能を考えてみましょう。

 

 

まずは、「トイレ」の目的を考えたいのですが、今回は逆に「トイレがなかったらどうなるか」を考えると、トイレがどのようにありがたいのかが見えてきそうです。

 

トイレがないと:

1)排泄物が、生活空間にたまってしまう

2)たまった排泄物が腐敗し、不衛生になる

 

そうすると、「トイレの機能」は

1)排泄物を生活空間から隔離する

           視覚的に隔離、臭いを隔離、虫が入らないように隔離、など

2)隔離した排泄物を処理する

           薄める、化学的に分解する、再利用する、など

というところになりそうですね。

 

 

これらを実現する方式として、昔ながらのポットン式とも呼ばれていた「汲取式」と「水洗式」を考えてみましょう。

一つ目の隔離する機能では:

  • 汲取式は、視覚的には隔離できても、臭いの隔離はできませんでした。
  • 水洗式は、視覚的にも、臭いも隔離でき、虫なども入らないようにできます。

二つ目の処理する機能では:

  • 汲取式は、基本的には人手で処理し、畑で肥料として再利用していました。
  • 水洗式は、トイレというよりも、公共の処理場がこの機能を賄っています。

 

すなわち、水洗式はトイレというよりも巨大な下水処理システムの一つとして考えなければならないということになります。

 

 

現在の(日本の)トイレを考えると、上記の基本的な機能以外に、様々な機能が追加されています。

すぐに思いつくのは「温水洗浄便座」でしょう(商品名でなく一般名で書くとこうなるようです)。

これらは「排泄後のおしりを、できるだけ清潔にしたい。しかも自分の手をできるだけ汚したくない。」というような、ユーザーの要求から生まれてきたものと思われます。

 

 

このようなトイレの機能は、日本独自のものらしく、外国人が初めて日本に来るとびっくりするらしいですね。中には、とても気に入って輸入して自宅に取り付ける人もいるとか。

 

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日本のモノづくりの強さは「品質の良いものを安く製造すること」とずっと言われてきましたが、このようなトイレの付加機能が生まれるのは、「日本のユーザーの品質を含めた機能への要求が高いこと」によるわけであり、これ自体も日本の製造業の強さの源泉ではないかと考えています。

 

 さてここまでは、排泄物が「いらないもの」「見たくもないもの」という前提で話をしてきました。

 

しかし、健康管理の視点からは、「排泄物を見ましょう」という話も聞こえてきます。

排泄物の大きさ、色、性状などから、健康状態(正確には消化器系の状態)がわかるというのです。

みなさん、排泄物(大きい方)は何からできているかご存知ですか?

実は、食べ物のカスは2割ほどで、それ以外は自分の細胞の死骸や腸内細菌の死骸だそうです。

だから、消化器の状態が顕著に表れるということですね。

 

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近い将来、今流行のAIやIoTとの組み合わせで健康状態を判別してくれるトイレ、というのも商品化されるかもしれませんね。

実際に商品になるかどうかは、日本人の機能への要求がどこまで高くなるのか次第といえるでしょう。

 

今回は、日ごろあまり話題にしない「トイレ」をあえて取り上げてみました。なくてはならないものですし、今後、いろいろと発展しそうな気配を感じてちょっと楽しみに思っています。

 

 

機能性表示食品ってどういう機能がある食べ物?

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最近、「トクホ」という言葉に代表されるようになにやらカラダに良さそうな食品・飲料品が増えていますね。 私も、コンビニやスーパーで買い物をする時、なんとなく意識するようになりました。

 

その中で最近、「機能性表示食品」という言葉をよく目にするようになりました。この制度、平成27年4月から始まっているようでもう2年もたっているのですね。

 

機能エンジニアとしては、ここでいう「機能性」とは何のことなのか、ちょっと調べてみたくなりました。

 

この制度、管轄は消費者庁のようです。

消費者庁のウェブサイト(http://www.caa.go.jp/foods/index23.html)
をみると説明があります。まとめるとこんな感じです。(※以下、消費者庁のウェブサイトコンテンツを基に当方で加工・編集を行ったものです)

 

「機能性」を表示できるものが「保健機能食品」、表示できないものが「一般食品」。「保健機能食品」には以下の3つがある: 

名称

内容

国への届出

国の許可

特定保健用食品

(「トクホ」)

健康の維持増進に役立つことが科学的根拠に基づいて認められている食品

許可制(表示されている効果や安全性については国が審査)

栄養機能食品

必要な栄養成分(ビタミン、ミネラルなど)の補給・補完のために利用できる食品

要(但し、既に科学的根拠が確認された栄養成分を一定の基準量含む食品であれば、届出しなくても可)

許可制ではない

機能性表示食品

科学的根拠に基づいた機能性を表示した食品

許可制ではない

(事業者の責任において、根拠を示す)

 

 

どうやら「健康の維持増進に役立つ」ことがこれらの食品の目的のようです。

 

「機能性表示食品」に関しては、必要な情報の届出を消費者庁長官に行い、消費者庁が内容を確認し、届出番号が発行されれば、「本品にはxxが含まれるので○○の機能があります」というような表示ができることになっているようです。

 

機能の定義…これって、難しいことです。

いろいろな場面でいろいろな定義があります。

 

ここでは、ISIDエンジニアリングで提唱している「機能で考える開発」では、どう考えて定義しているのか、説明をしたいと思います。

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「機能性表示食品」として届出されているものは消費者庁のウェブサイトで検索することができます。7/17現在、997件ありました。生鮮食品も8件あります。

検索して最初に目に入った成分、「難消化性デキストリン」について取り上げてみたいと思います。食物繊維の不足を補う目的でトウモロコシから作られたもののようです。

機能性表示食品に使われているものは、141件ありました。

 

検索結果に「表示しようとする機能性」というものがあります。これが機能の定義のようですね。

難消化性デキストリンが成分として登録されている、ある食品についてみてみました。

 

この説明をみると

健康の増進、具体的には脂肪の取りすぎを防ぐ、糖の取り過ぎを防ぐ、おなかの調子をすっきり整えるために以下3つが機能といえそうです。

  • 脂肪の吸収を抑えて排出を増加させる
  • 食後の血中中性脂肪や血糖値の上昇を穏やかにする
  • おなかの調子を整えるための何かをコントロールする(記述がない為不明)

「機能で考える開発」では、この機能をもう少しかみ砕いて、物理特性で表現をするようにしています。

例えば、1は脂肪吸収率・脂肪排出率を物理特性で定義してみます。口にしたものは24時間で消化・吸収・排出され、排出されないものは全て吸収されると仮定して、

 

脂肪吸収率(脂肪排出率)=(1日に摂取した食品に含まれる脂肪量―排便に含まれる脂肪量)/(1日に摂取した食品に含まれる脂肪量)

 

具体的に表現すると、さて実際にこれをどう計測しようかということまで考えられるようになります。そして実際に脂肪吸収率がどうなっているのか事実が分かれば、カラダの中で何が起きているのか、更にいろいろなことに考えがめぐるようになります。

 

また、物理特性で表現すれば、物理の原理原則に基づき、カラクリを紐解くことができること、機能の高さを定量的に数値で表すことができ、明確な目標設定ができること、そして最終的にやりたいことが実現する道筋が描けるということなのです。

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機能とひとことでいってもいろいろな捉え方があります。私はそのいろいろな捉え方を否定するつもりはありません。なぜなら、どういう捉え方をするにせよ、機能を語るとき、何らかの目的があり、その目的を達成するために手段を考えていくことになるからです。

ただし、目的と手段を正しくつなげて設計的に実現可能なものにするためには前述したような物理の原理原則で理論的に表現するアプローチが必要と思っています。

 

ちょっと理屈っぽい話になりましたが、お伝えしたいことが少しでも理解頂けるとうれしいです。

 

 

プロサーファーはサーフボードの機能を極限まで引き出すパフォーマー

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7月に入り気温は随分高くなってきました。海水温もこれから8月中旬頃までさらに上昇していきます。 

そして、お盆までは海の波は比較的穏やかで海水浴にいい季節で、私が大好きな湘南も多くの海水浴客で賑わいます。

その後は土用波も更に高くなり・・・台風シーズンに突入!というのが、私が幼少の頃のセオリーだった気がしますが、最近はあまり季節感がないようですね。

 

 

さて、いつぞやのブログでは波について考えてみましたが、今回はサーフボードについて考えてみたいと思います。

 

サーフボードの機能とは何でしょうか?波乗りの道具なんていわないで、物理の原理原則で定義してみたいですね。 まずは、サーフボードの構造から機能を考えてみたいと思います。

 

サーフボード自体が受ける力は

  • サーファーの体重やボードの重さ受ける重力
  • ボードの浮力
  • 波から受ける力
  • 海面とボードの摩擦力

があります。

 

ボードそのものの浮力はボードの大きさ(長さと厚さ)、波から受ける力は波の大きさが支配的(波が高いほど伝播速度は速いので)と思います。

 

摩擦力は理論的には摩擦係数と荷重で決まりますが、ボードと海面の状況から摩擦係数は一定ではないことは想像に難くなく、接触面積によっても影響すると思います。それらはボードのロッカー形状(ボード前後方向の反り)、ボードボトムのコンケイブ、コンベックス形状(ボードの左右方向の反りのこと。コンケイブが凹、コンベックスが凸)が影響因子になります。コンケイブは海面とボードの裏、表の水の流れによっては揚力を発生する因子にもなります。

 

これらからは、サーフボードは波の力や、サーファーからの力を受け止めており、受け止め方もその形状により状況が異なっているようです。

   

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他の構造に目を向けてみましょう。ボードにはフィンがついています。

 

前述したように、サーフボードにはさまざまな力が働いており、フィンのないボード(ただの板)では波の上をすべる方向が不安定になるため、直進安定性をあげるためにフィンが考案されました。最初はシングルです。

 

ところが、それは必ずしも有効に働かない場合があります。

 

サーファーがボードを操作する状況を想像してみてください。方向を変えるときにボードの面は海面に対して水平ではなく、相当な傾きを持っています。すると、ボードの後ろ側、左右方向の中心につけられたフィンは、海面から飛び出してしますのです。(それを「フィンが抜ける」というようです)

 

そこで、ターン後半でのフィンの海面からの抜けをなくすために、サイドフィンが生まれました。左右に2つ装着されたツインタイプです。

 

しかし、ツインタイプはボードを回転させやすいけれど、かならずしも直進性は高くなく、そこで中心にフィンを追加した3本フィンのトライが誕生したのです。

 

このようにフィンはボードを海面の上に走らせたときの安定性とターンの操作性の両立をするために進化してきました。

最近ではフィンが着脱できるようになり、そこでトライの中心のフィンを2本に分けて、直進安定性と操作性のバランスをさらに変えることのできる4本タイプ、クワッドがでてきました。着脱式なので、中心に1本、あるいは2本装着して、状況や好みによって変えることができます。

 

こう考えてくると、フィンはサーファー側からの視点で、波の上で直進性や回転操作性を狙いのレベルで確保するためのものであるといえます。

 

もう一つ、別の構造としてボードの後部、テールデザインがあります。テールをカットすると直進性と回転操作性のバランスは回転操作性が優先に変わってきます。

 

以上をまとめると、サーフボードは波とサーファーの力を入力として、それぞれの力の受け渡しをしながら、波の上を進んでいくための力を出力として取り出す機能があるといえるのではないでしょうか。

そしてプロサーファーは波の上を進んでいくための力を自由にあつかう高いスキルをもった人なのでしょう。

 

 

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しかし、最終的にその機能をどういうレベルにできるかは、どのようなサーフィンスタイルを求めるか(直進性なのか、それとも回転操作性が優先なのか)によって決まっていくものです。

それに加え、自らの技術レベルや波の状況はどうなのか?(大きさとか、どこで波が崩れるかなど)等、そういったことを明確にして目標を設定することが、最終的に機能の「因子」(機能の水準に影響を及ぼす、あらゆる内部要素・外部要因)を明確にすることにつながり、目標を達成する近道と考えています。

 

最後に自分自身が描いた理想のボードを的確にシェイプしてくれるシェイパーにめぐり合うことも重要な要素です。いい道具はいいテクニシャンから生まれることも忘れてはなりませんね。