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みぢかを機能で考える

ISIDエンジニアリング・機能エンジニアが機能で考える開発について紹介します。

春本番…いやもしかしてもう夏?

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桜前線も本州北部まで上り、420日のウェザーマップの予想だと4月中には北海道南部まで開花の予想となっています。

 

日中は汗ばむ陽気になることもありますね。

最近は春や秋が短くなったと感じている方も多いのでは。  地球温暖化による日本の亜熱帯化だとか

 

 

平成293月実施の内閣府消費動向調査では二人以上の世帯でエアコンの普及率は91.1%という数字が出ています。

しかし、それでも、夏が近づいてくると登場するのは扇風機。

その手軽さと即効性が重宝されているのだと思います。

 

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なぜ扇風機の風にあたると涼しいのでしょうか?

 

扇風機が涼しい風を送っているわけではないですよね。

送られた空気と、体表に温度差があると、空気の流れにより体表から熱が移動する(対流)、

あるいは体表に汗などの水分があれば、気化されることにより奪われる気化熱によって涼しく感じているってことでしょうか。

 

家電量販店でよく見かける通常の扇風機の機能は

 

電気エネルギーをモーターにより回転(運動)エネルギーに変換し、回転エネルギーを羽根に与え、羽根により周囲の空気を押し込み、空気に運動エネルギーを与える…。

D社の羽のない扇風機も周囲の空気を押し込んで空気に運動エネルギーを与えるという点では同じで、空気を押し込む手段がちがうだけなのでしょう。

 

機能的には単なる送風機というべきなのですが、「扇風機」と名がついたモノの目的は、体を風により冷やす、涼しく感じさせること。

そのために

  • 体の方向へ風向を変えやすいコンパクトな形
  • 送風の量を簡単に変えられるようなスイッチ
  • 風を満遍なく送れる首振り動作
  • 就寝時に体表を冷やし過ぎないOFFタイマー

などが与えられていますね。

 

単なる送風機がいろいろな機能と組み合わせることにより、「涼しくする」という目的により近くなる。

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実際に人が涼しく感じるかどうかは人間の五感をどう刺激するか次第、その五感に寄り添う形で色々な機能が合わさっているといえるのかもしれません。

 

ならば体表の空気の流れや気化熱と、涼しく感じる「脳」との繋がり、ここを紐解けばより高い機能を実現できるのかもしれませんね。

 

 

 

サッカーは機能で考えるスポーツ…?

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このブログのスタート時に「機能で考える」ということについてお話をさせてもらいましたが、その「機能」とは以下のような見方をすることに特徴があることを説明しました。

 

  1. 何のために(目的)、何をどうするのか(手段)を考えて、Input・Process・Outputを表現する
  2. 物理特性で表現(エネルギーとか、温度、圧力といったもの)

 

今回は1.の「何のために(目的)」について考えたいと思います。

 

 

 

私もいくつかのスポーツを楽しんでいるオヤジです。

サッカー、サーフィン、スノーボード、マウンテンバイク・・・。それぞれ長く続けていますが、歳とともに、目的・楽しみ方が変化してきました。

 

その中でもサッカーは学生の時分に取り組んできたものです。小学生の時は部活でサッカーをしていましたが、中学、高校は一旦離れ、そして大学に入学してあらためてサッカーを始めました。

 

大学での活動では中学、高校6年間サッカーをやってきた人が殆どで、彼らはその経験を通して基本的な戦略・戦術を持ってプレーをしていました。 

 

一方、私は小学校以来の本格的な活動であり、基本的な戦略・戦術を理解していたわけではなく、練習や試合ではピッチ内で動き回るのが精一杯で、ただ体力を消耗するだけでした。  今思い返しても1年生の夏、暑いピッチ上で苦しい思いをしていたことが鮮明によみがえってきます。

 

しかし、練習を重ね戦術を理解することで、私もチームの一員として「機能」するようになってきました。 そのとき学んだ戦術の主眼は「いかに多く得点して勝つか」。 攻撃の進め方が主だったのです。

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そんな私も3年生の時、チームの中心としてリーダーシップを発揮する役回りとなりました。  ところが、新チームが所属していたリーグ戦で全く勝てず、どん底状態になったのです。  その時、私はこれまで学んだ戦術「いかに多く得点して勝つか」を主眼にメンバーのポジションを決めていましたが、残念ながら失点が多く、結果として勝つことができなかったのです。

 

リーグ戦の終盤から、どうチームを変えていったらよいかチームメンバーと共に考え、失点しない守備をまず設定することにしました。「得点して勝つ」から「失点を防いで勝つ」ことを戦術の主眼にしたのです。

加えて、パス回しを早くすることで、攻守の切り替えを早くできるように練習を重ね、次節のリーグ戦では、よい成績を残すことができました。

 

 

改めて考えてみます。 勝つためにはどうすればよいのでしょうか?

 

「得点>失点」を実現することですよね。

 

大学生活の最初は私が組織の中でサッカーに取り組むことが小学校以来、久々であることもあり、とにかくチームのメンバーとして得点することに尽力していました。つまり「得点する」こと自体を目的に動き回っていました。

しかし、勝つためには「得点>失点」であり、得点することはそのための手段ともいえます。

 

3年生になったとき、私はチーム活動の責任の一角を担うようになり、勝つためには「得点>失点」であることを改めて認識し、「失点を防ぐ」ことも重要な目的として捉えたのです。

しかし、勝つためには「得点>失点」であり、失点を防ぐことも得点することと同様に勝つための手段ともいえます。

 

目的と手段のツリーで表現すると大体こうなると思います。

 

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ここで考えておかないといけない大事なことは、サッカーは11人のチームが攻守両方を行うことです。

 

同じ選手でも攻撃にまわったり、防御にまわったり。

もちろん、FWの選手は攻撃がメイン。キーパーは殆どが防御です。
しかし、FWの選手でも守りにまわりますし、キーパーの最初のキックは攻撃の始まりといえます。最下段のブロックは同じ選手が状況に応じて対応しないといけないのです。

 

このように、勝つという「目的」に対して攻撃と防御を切り替えつつ、11名の固定されたメンバーでゲームを進める必要があるのです。チームがもつ得点の機能を高めたり、防御の機能を高めたり、異なる機能を配分しながら戦わねばならないのです。

 

 

同じようなことがいろいろな製品のシステムでもいえると思います。

 

例えばタイヤ。車の乗り心地や、操舵安定性に大きな影響を与えています。
タイヤのスペックをリアルタイムで変えることはできませんが、車の求められる性格に応じて、乗り心地や、操舵安定性にどのように機能を配分していくか、これを考えることが必要です。

 

よく言われるのが「背反」という言葉。あちらを立てれば、こちらが立たず。タイヤでも乗り心地をよくしようと思ったら、操舵安全性は悪化するかもしれません。

しかし、機能を配分するという考え方に立ち、高いレベルで両立することもできると思っています。

目的とする機能を物理特性で表現し、物理の原理原則にのっとり紐解くことに取り組んでいく。

そこにポイントがあると思っています。

 

 

2018年ロシアで行われるサッカーワールドカップに向けて日本代表チームは頑張っていますね。チームが勝つための機能をフレキシブルに配分しながら「勝つ」という目的を果たし、予選を勝ち抜き、本選でも活躍してくれることを願ってやみません。

  

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本は消えない ~人類史上最強の記録媒体~

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こんにちは。機能エンジニアです。

これまで3回、みぢかを機能で考えるブログを配信してきました。

私が機能について語っている理由は、機能を考えることで物事の本質を理解する一助になると思っているからです。

ただ、どちらかというと「技術」に焦点をあてた内容だったと思います。

今回は、技術寄りの話から少々離れて考えてみたいと思います。

 

 

今、kindleで本を(漫画ですが・・・笑)読んでいるのですが、実に便利です。

まず本屋に行く手間がいらない。すぐ手に入る。

そして、手のひらの端末が本棚なので、次の巻を取りにいく手間がいらない!

なんて便利な時代なのでしょうか。

これになじんでしまうと、もはや本を買う必要もなければ、本屋に行く必要もなく、本棚もいらない。

・・・となるはずですが、実際には本は買っているし、本屋にも行くし、家には本棚がある。

そしてこれからも変わらないでしょう。

 

なぜでしょうか?

 

このブログでは、本への愛情や魅力、ましてや書店愛を語るつもりはありません。そのような内容は、もっと文才のある人が美しくも感動的な文章で上手に表現してくれているはずです。

 

ここでは今までの流れと同じように、冷静かつ客観的に、「本」というものの機能を考えてみます。

 

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さて、本は何のためにあるのでしょう?

 

情報を、後世に残すため、誰かに伝えるため、不特定多数に広めるため。

そのために、情報を文字という記号に置き換え、紙という媒体に記録する。それが本です。要するに「記録媒体」です。

 

これだけの機能であれば、本という存在は、デジタル化の進行とともに間違いなく消えると私は思っています。

 

それでも消えないのは、「伝える」という目的があるからだと考えています。

 

伝えるには、その方法が容易であることが重要なことの一つだと思います。

 

電子書籍は、端末とソフトとそして電気エネルギーがあって初めてその情報が伝えるべき人間の前に現れます。

でも本は開くだけです。

この差は非常に大きい。

電気がなくなった世界では、端末という道具は働かず、情報を再生することはできないのです。本には道具は要りません。

 

また「伝える」には、伝える対象の人が「理解する」ことも重要だと思います。

文字情報が目の前にあるだけでは意味がなく、目を通して脳に伝わり、脳がその文字情報を文脈として脳内で変換し理解して初めて意味をなすのです。

 

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本を読む行為でもエネルギーを使うといいます。一説によると75分間の読書で100キロカロリーとか。

 

しかし、同じエネルギーを費やすとしても、その本のありようによって伝わり方は違いますよね。

文章を読み理解していくことは、読み手の論理的な思考が必要であることは間違いありません。

一方で、文章の行間・段落を適切に設定することで読みやすい体裁を保つ、ページ構成デザインに工夫を凝らす、そして表紙等の装丁を行うことにより、読み手の視覚的印象は随分異なります。

 

読み手の左脳と右脳が共に刺激される…そういう状態になれば本の機能はより高いものになっているのではないかと思っています。

 

 

そういう機能を私は「脳内を耕す」機能と呼びたいと思います。

 

では電子書籍に「脳内を耕す」機能は無いか?と聞かれれば答えは「有る」になります。

電子書籍化する際にカラー化された漫画もたくさんあります。これは非常に読みやすいし美しい。でも紙の本にはそれ以上に「脳内を耕す」機能に繋がる要素がたくさんあると思っています。

 

例えば

 

  • 紙の香り
  • ページをめくる触感
  • 本の重量感
  • 読み進むうちに、ページが進み、進捗が目に見える。
  • 装丁の美しさ
  • 新刊にのみ付属する帯のデザイン
  • 本棚に並べた時の統一感と壮観さ
  • カラー印刷の発色の美しさ
  • 大判の本の迫力

などなど

 

これらは電子書籍でも再現できるかもしれませんが、紙の本にはかなわないと思っています。

人の五感に訴える感性的なものですが、すべて「脳内を耕す」上で重要な役割を担っていると私は考えています。

 

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・・・といろいろ書いてきて、ふと思ったのですが・・・

確かに装丁がきれいであることは、読むモチベーションを高めて「脳内を耕す」かもしれません。

でも、とてつもなくきれいだとしたら?

怖くて読めない…というか、さわれないのでは?

並べて美しいものは本棚から取れないのでは?

 

そういう本を買う一番の理由は、

「所有欲」

といえるのかもしれません。

 

記録媒体としての機能以外にも、本の機能は何かありそうです。

続きは、また後日。

 

 

自動運転は自動車が目指すべき理想の姿なのか?

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いま話題となっている自動運転。

 

自動車の運転には大きく以下の二つの機能が関わっていると考えていますが、自動運転はこれらをICTの技術により機能の向上をめざそうとするものです。

  • 運転者の意思を自動車に伝える、自動車から運転者が情報を得る
  • 伝えられた運転者の意志に対応し自動車を動かす、自動車が外部情報を得る

 

 

手放しでも運転できる、衝突を回避するためにブレーキをかけるだけでなく回避運転をする、目的地まで自動で走る…。何れも実現すれば素晴らしい技術であることは間違いありません。

 

しかし目的地まで自動で走るって、形のないレールを走る鉄道ともいえるかもしれませんね。

 

ところで…

自動車って何のために生まれてきたのでしょうか?

 

自動車を筆頭に、いまや、我々の生活に無くてはならない車がたくさんあります。

 

原点に返り、車の機能を考えてみたいと思います。

 

「走る」「曲がる」「止まる」

 

 

よく言われる言葉ですが、これらは機能といえるのでしょうか?

 

これらは「機能」を果たした結果だと思っています。
目的ともいえるものだと思います。

ただ、その目的も、さらに上位の目的に対しては手段になります。何のために「走る」「曲がる」「止まる」のかが、上位の目的です。

 

その目的の違いによって、さまざまな車が存在しているのだと考えています。

 

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これらは人が移動するために使うし、荷物を運ぶためにもつかいますね。

 

 

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これらは物を運ぶためですが、原点はピラミッドの壁画にもあるような以下のようなものかもしれません。

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こんなのもあります。

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これは…運動のための車?

 

 

色々な形がありますね。

 

これらも以下の観点で「機能」で考えてみるとどう表現されるのでしょうか

 

1)   何のために(目的)、何をどうするのか(手段)を考えて、Input・Process・Outputを表現する

2)   物理特性で表現する(エネルギーとか、温度、圧力といったもの)

 

いずれも質量がある物を移動するのは同じですが、質量は違うし、移動の速度も違いますね。

そこでこのように表現してみました。

 

シンプルに

動力源から供給されるエネルギーを運動エネルギーに変換する

ただこれだけです。

変換の過程でエネルギーロスが出るので、下図のようにしてみました。

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車は目的によって必要となる運動エネルギーの範囲が異なり、それゆえ動力源が異なっています。

動力源は人力だったり、内燃機関であったり、モーターであったり。

 

動力源・移動対象・目的により筐体(きょうたい)が異なり、それゆえ自立のための手段が異なってきます。

 

車の基本機能はどれも同じであるが、目的が手段になっていく過程で、具体的な物の形になっていると考えることができると思います。

 

しかしいずれもやりたいことはロスエネルギーを最小にして運動エネルギーに変換することで動力源のエネルギーを必要十分にすることではないかと思っています。

 

 

 

 

”ピラミッドに積む巨石を楽に運びたい…!”

 

摩擦力によるロスエネルギーを減らし、人力で巨石を運ぶことができるようにするために、古代エジプトの人々は知恵を絞り、「ころ」を敷き、巨石をひいて運んだ。

それが、一輪車やリヤカーで物を運ぶ形に進化した。

 

さらに重い物を運んだり、遠くへ短時間に移動したりするために、さらに大きな運動エネルギーを得るために動力源エネルギーを車輪へ加え、動力源は人力から内燃機関やモーターといった原動機へ。

 

形はあくまでも実現手段。そもそも「何のために…?」を考えていくことにより、

基本機能が何なのか

その基本機能を高めるために何をすべきか

そういったことを考えることができるのではないかと思っています。

 

羽生結弦が絶対王者であるために ・・・ 技を支える靴の機能とは

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この頃、フィギュアスケートの人気が更に高まっていますね。テレビでの放映を見ても、海外での競技に日本の会社のスポンサーがたくさんついていることからそれがわかります。特に男子で、羽生結弦が表彰台の真ん中に立つようになって一気に人気が出て来ていますね。ちょうど今日から、世界選手権が開催されますので日本選手の活躍が期待されるところです。

 

ということで、このフィギュアスケートの技を支える「スケート靴の機能」を考えてみましょう。

 

「スケート靴は氷の上で滑るためにあるんじゃないの?」

・・・ 確かにその通りです。

でも、長靴で氷の上を歩いても、つるつる滑りますね。では、この場合のスケート靴と長靴の機能の違いはなんでしょうか?こうしたことを、詳しく考えてみましょう。

 

ただし、やみくもに「機能はなんだろう?」と考えても、答えは見つかりません。ですから、現物を見て「これは何のためにあるのだろう」と考えたり、歴史的なことを考えてみるのが有効です。

 

ではまずは、スケート靴の歴史を想像してみましょう。古代の遺跡を調べた結果、実は原始時代にすでに、履物の下に動物の骨を縛って滑る「スケート靴の原型」を使っていただろうと推定されています。  そのうちに、骨が木の棒に変わり、鉄のブレードに変わっていったということですね。

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次に、現物をよく見てみましょう。スケートを滑ったことがある人ならば、スケート靴についているブレードの「エッジ」というものが、うまく滑るためにはとても重要なことを知っているでしょう。このエッジが何のためにあって、どのように働いているのだろうと考えると、だんだんと機能に近づいてゆくことができます。

ブレードにエッジがあるから、氷を蹴ることができて、またブレーキをかけることもできるのですね。

 

 

これらの歴史や現物の考察を踏まえながら、スケート靴の「目的」を考えてゆきます。

 

何のために昔の人は「スケート靴の原型のようなもの」を作ろうとしたのでしょうか。

冬に、雪や氷におおわれる地方では、食料を得るために移動するのがとても大変になります。しかも、「移動する」ということは、単に動けばいいわけではなく、「自分の行きたい方向に自由に動ける」ことが重要です。

 

 

そこで、「スケート靴を作った目的」を

 

 

氷の上で、できるだけ少ない労力で、思い通りに移動すること」と考えてみましょう。 

 

 

では、まだ世の中に「スケート靴」なるものが存在しないと想像しましょう。そして「氷の上で、できるだけ少ない労力で、思い通りに移動する」という要求を満たすために、どのような機能を満たせばいいか、そしてその機能を実現する道具はどんなものにすればいいか。

 

 

まず、「氷の上をできるだけ少ない労力で移動する」ために、どのような物理現象を利用するのが得策でしょうか?(答えはもちろん一つではありません)

 

 ・・・ここでは「平らな氷の上では摩擦がとても低いので、容易に滑る

 

という事実に着目します。

 

すなわち、一旦惰性をつければ、その後は労力をあまりかけなくても移動し続けてくれるのです。

 

ここで「一旦惰性をつければ」という前提が付きました。

この「惰性をつける」すなわち「体に速度を与える」ためには、

 

今度は「摩擦がとても高く」ないといけません。

 

そうしないと、蹴っても滑ってしまって惰性はつかないのです。

 

 

次に「思い通りに移動する」ためには、移動の向きを変えたり、止まったりしなくてはなりません。

これは移動している方向と違う方向や逆の方向に速度を与えることを意味します。

この場合も「摩擦がとても高く」なければならないわけです。

 

 

このように「摩擦が低くなければならない」ことと「摩擦が高くなければならない」という矛盾した状態を同時に満たすためには、どのような機能が必要でしょうか?

 

 

 ・・・その一つの答えが「方向によって摩擦を変える」機能です。

すなわち、「ある方向にはつるつるに滑らせ、かつ、それに直角な方向にはとても滑りにくくする

という機能です。これがあれば、あとは使う人が、この向きをうまく使い分ければいいわけです。

この機能が、長靴にはなくて、スケート靴にあるもっとも根本的な機能と言えるでしょう。

 

ではこれを実現するにはどのような手段があるでしょうか。これを考えるのが、エンジニアや設計者の仕事ですね。その一つの例が、今日のスケート靴についている「ブレード」です。

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薄い鉄の刃のようなものを立てて、その下面を平らにし、そのエッジを尖らせる

 

 

ということになります。ブレードを傾けるとエッジが氷に食い込んで横には滑らなくなるのです。もちろん、誰かが一度にこれを全て考えた、ということではなくて、長い時間をかけた改良の中でだんだんとこのようになっていたのでしょうね。

 

 

こうしてスケート靴ができましたが、そのうちに、この機能が「分化」します。それは、要求が細分化されたからです。例えば、スケート靴で滑ることが一般的になってくると、さらに以下のような願望が出てきます。

 

 

1)氷の上をできるだけ速く移動したい

 

2)氷の上で球技をしたい(そのためには、滑る向きを自由に頻繁に変えたい

 

3)氷の上で踊りたい(ステップを踏んだり、ジャンプをしたい

 

 

これらの要求事項に応じて、スケート靴はそれぞれ独自の進化を遂げました。

 

 

1)のためには、
まっすぐ滑るための抵抗が小さい」という機能に磨きをかけたいので、ブレードを非常に薄くして、でも接地面積は必要なので長くすることになります。

これがスピードスケート用の靴です。
近年では、氷を蹴る時間を長くするためにブレードが動くものも出ています。

 

2)のためには、

ブレードを踏み変えなくても向きが変わる(即ちターンする)」という機能が必要になし、そのために、ブレードの前後を持ち上げて横から見て円弧の形になるようにしました。

これがアイスホッケー用の靴です。

 

3)のためには、

いろいろな向きに氷を蹴る」機能が必要になり、つま先部分にギザギザの「トウピック」が付きました。また「着地の衝撃にも耐えられる」ようにブレードは厚くなりました。

これがフィギュアスケート用の靴です。

 

 

このように、人間が作るものは、人の願望(要求事項)がトリガーとなって、付加的な機能が追加されて進化してゆくのですね。かのエジソンも言ったように「必要は発明の母」ということですね。

 

 

さて、冒頭のフィギュアスケートの技を支える「スケート靴の機能」は、実はブレードのエッジという微細なところに内包されていることを見てきました。

 

「スケーティングがうまい」と言われる選手は、一蹴りであっという間にスピードに乗れる、と言われます。

 

これを言い換えると

 

蹴るときはしっかりと摩擦を得て、滑るときには摩擦を極力減らすためのエッジの使い方がうまい

 

とも言えます。フィギュアの審判はそういうところに注目しています。

あなたも、世界選手権でエッジの使い方に注目すると、より楽しめるのでは。

 

では、今日はこのくらいで。

 

はじめます

私は自動車メーカーなどを中心に約20年以上、

ものづくりに関わってきていますが、現在「機能で考える開発」というものをさまざまな

大手メーカーさんに提供しています。

 

実際、「機能で考えるってなに?」「機能エンジニアリングとは?」と聞かれることも多いので、

身の回りにある「みぢか」なものを「機能」で考えていくブログを始めてみようと思います。

 

 

機能で考えるとは?

 

 

「機能で考える」を説明するために、まずここで定義している「機能」とは、

何なのかを説明したいと思います。

 

ここでいう「機能」は、

対象となるシステムを以下の見方で表現することに特長があります。

 

  1. 何のために(目的)、何をどうするのか(手段)を考えて、Input・Process・Outputを表現する
  2. 物理特性で表現(エネルギーとか、温度、圧力といったもの)

 

もう少し噛み砕いて説明すると、

例えば、自動車やバイク、自転車についているブレーキ!

ブレーキの機能って何ですか?って聞かれたら、あなたはなんて答えますか?

 

 

「ブレーキの機能は車を止めること」

 

多くの方がこう答えます。

 

 

確かにそれは正しいです。

ただ、私たちはブレーキが車を止める...というのは「現象」であり、機能が作用した「結果」である、
と考えます。

 

一般的には「機能」=「結果」のように捉えられることも多いですが、

そうではなく、ブレーキの「目的」や「手段」から考えることで本質的な「機能」から

ブレーキを考えています。

 

 

なので、私たちが考えるブレーキの「機能」は以下のようになります。

 

 

「運動エネルギーを減少させるために、回転運動エネルギーを摩擦力で熱エネルギーに変換する」

 

InputProcessOutputを図で表現すると以下のようになります

 

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これは多く使われているディスクブレーキやドラムブレーキの場合ですが、

電車やハイブリッドカーなどで使われている回生ブレーキはモーターを発電機として使い、

運動エネルギーを電気エネルギーに変換しているのです。

 

こう考えると、ブレーキのことがもう少しわかってきます。

 

 

 

  • なぜブレーキをかけるとその回りが熱くなってくるのか…?

           結果的に熱くなっているのでなくて、意図的に熱が発生しているのです。

 

  • なぜディスクに穴がたくさんあいているのか…?

           空気に触れる表面積が多いほうが放熱が促進します。

           ということはより、熱エネルギーに変換しやすくなる、

           つまりブレーキがききやすくなるというわけです。

 

 

なぜ機能で考えるのか?

ISIDエンジニアリングがなぜ「機能で考える」こと、「機能で考える開発」を推進しているのか…?

それは2つの理由があります。

 

第一に構想設計の充実です。

開発の初期段階で目標達成のための道筋を物理の原理原則で考え、シナリオを描くことで理論的に一発で目標必達できるようになります。

 

やってみないとわからない、とりあえずやってみたけどうまくいかない、そしてやり直しになるという状況から解放され、リソースのフロントローディングが可能になるのです。

 

第二に機能のあるべき姿を物理の原理原則で考えることでモノの本質・理想を追い求めることができるようになります。

理想と現実の狭間に立ったとき、皆さんはどうされていますか…?

 

「理屈の上ではそうだけど、実際はそうはいかないんだよね」

とか言ってあきらめてませんか?

 

理屈は理想ではなく、

理想を物理の原理原則で定義することで理想と現実のギャップを解き明かしていく可能性がでてきます。

より理想に近い目標を設定し、ギャップを解き明かし、目標を達成することで今まで成し遂げられなかった技術革新がおきるのです。

 

 

このようにみぢかを機能でかんがえるといろんなことが見えてきます。

 

 

次回からはその「みぢか」をいろいろ考えてみたいと思います。