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みぢかを機能で考える

ISIDエンジニアリング・機能エンジニアが機能で考える開発について紹介します。

羽生結弦が絶対王者であるために ・・・ 技を支える靴の機能とは

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この頃、フィギュアスケートの人気が更に高まっていますね。テレビでの放映を見ても、海外での競技に日本の会社のスポンサーがたくさんついていることからそれがわかります。特に男子で、羽生結弦が表彰台の真ん中に立つようになって一気に人気が出て来ていますね。ちょうど今日から、世界選手権が開催されますので日本選手の活躍が期待されるところです。

 

ということで、このフィギュアスケートの技を支える「スケート靴の機能」を考えてみましょう。

 

「スケート靴は氷の上で滑るためにあるんじゃないの?」

・・・ 確かにその通りです。

でも、長靴で氷の上を歩いても、つるつる滑りますね。では、この場合のスケート靴と長靴の機能の違いはなんでしょうか?こうしたことを、詳しく考えてみましょう。

 

ただし、やみくもに「機能はなんだろう?」と考えても、答えは見つかりません。ですから、現物を見て「これは何のためにあるのだろう」と考えたり、歴史的なことを考えてみるのが有効です。

 

ではまずは、スケート靴の歴史を想像してみましょう。古代の遺跡を調べた結果、実は原始時代にすでに、履物の下に動物の骨を縛って滑る「スケート靴の原型」を使っていただろうと推定されています。  そのうちに、骨が木の棒に変わり、鉄のブレードに変わっていったということですね。

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次に、現物をよく見てみましょう。スケートを滑ったことがある人ならば、スケート靴についているブレードの「エッジ」というものが、うまく滑るためにはとても重要なことを知っているでしょう。このエッジが何のためにあって、どのように働いているのだろうと考えると、だんだんと機能に近づいてゆくことができます。

ブレードにエッジがあるから、氷を蹴ることができて、またブレーキをかけることもできるのですね。

 

 

これらの歴史や現物の考察を踏まえながら、スケート靴の「目的」を考えてゆきます。

 

何のために昔の人は「スケート靴の原型のようなもの」を作ろうとしたのでしょうか。

冬に、雪や氷におおわれる地方では、食料を得るために移動するのがとても大変になります。しかも、「移動する」ということは、単に動けばいいわけではなく、「自分の行きたい方向に自由に動ける」ことが重要です。

 

 

そこで、「スケート靴を作った目的」を

 

 

氷の上で、できるだけ少ない労力で、思い通りに移動すること」と考えてみましょう。 

 

 

では、まだ世の中に「スケート靴」なるものが存在しないと想像しましょう。そして「氷の上で、できるだけ少ない労力で、思い通りに移動する」という要求を満たすために、どのような機能を満たせばいいか、そしてその機能を実現する道具はどんなものにすればいいか。

 

 

まず、「氷の上をできるだけ少ない労力で移動する」ために、どのような物理現象を利用するのが得策でしょうか?(答えはもちろん一つではありません)

 

 ・・・ここでは「平らな氷の上では摩擦がとても低いので、容易に滑る

 

という事実に着目します。

 

すなわち、一旦惰性をつければ、その後は労力をあまりかけなくても移動し続けてくれるのです。

 

ここで「一旦惰性をつければ」という前提が付きました。

この「惰性をつける」すなわち「体に速度を与える」ためには、

 

今度は「摩擦がとても高く」ないといけません。

 

そうしないと、蹴っても滑ってしまって惰性はつかないのです。

 

 

次に「思い通りに移動する」ためには、移動の向きを変えたり、止まったりしなくてはなりません。

これは移動している方向と違う方向や逆の方向に速度を与えることを意味します。

この場合も「摩擦がとても高く」なければならないわけです。

 

 

このように「摩擦が低くなければならない」ことと「摩擦が高くなければならない」という矛盾した状態を同時に満たすためには、どのような機能が必要でしょうか?

 

 

 ・・・その一つの答えが「方向によって摩擦を変える」機能です。

すなわち、「ある方向にはつるつるに滑らせ、かつ、それに直角な方向にはとても滑りにくくする

という機能です。これがあれば、あとは使う人が、この向きをうまく使い分ければいいわけです。

この機能が、長靴にはなくて、スケート靴にあるもっとも根本的な機能と言えるでしょう。

 

ではこれを実現するにはどのような手段があるでしょうか。これを考えるのが、エンジニアや設計者の仕事ですね。その一つの例が、今日のスケート靴についている「ブレード」です。

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薄い鉄の刃のようなものを立てて、その下面を平らにし、そのエッジを尖らせる

 

 

ということになります。ブレードを傾けるとエッジが氷に食い込んで横には滑らなくなるのです。もちろん、誰かが一度にこれを全て考えた、ということではなくて、長い時間をかけた改良の中でだんだんとこのようになっていたのでしょうね。

 

 

こうしてスケート靴ができましたが、そのうちに、この機能が「分化」します。それは、要求が細分化されたからです。例えば、スケート靴で滑ることが一般的になってくると、さらに以下のような願望が出てきます。

 

 

1)氷の上をできるだけ速く移動したい

 

2)氷の上で球技をしたい(そのためには、滑る向きを自由に頻繁に変えたい

 

3)氷の上で踊りたい(ステップを踏んだり、ジャンプをしたい

 

 

これらの要求事項に応じて、スケート靴はそれぞれ独自の進化を遂げました。

 

 

1)のためには、
まっすぐ滑るための抵抗が小さい」という機能に磨きをかけたいので、ブレードを非常に薄くして、でも接地面積は必要なので長くすることになります。

これがスピードスケート用の靴です。
近年では、氷を蹴る時間を長くするためにブレードが動くものも出ています。

 

2)のためには、

ブレードを踏み変えなくても向きが変わる(即ちターンする)」という機能が必要になし、そのために、ブレードの前後を持ち上げて横から見て円弧の形になるようにしました。

これがアイスホッケー用の靴です。

 

3)のためには、

いろいろな向きに氷を蹴る」機能が必要になり、つま先部分にギザギザの「トウピック」が付きました。また「着地の衝撃にも耐えられる」ようにブレードは厚くなりました。

これがフィギュアスケート用の靴です。

 

 

このように、人間が作るものは、人の願望(要求事項)がトリガーとなって、付加的な機能が追加されて進化してゆくのですね。かのエジソンも言ったように「必要は発明の母」ということですね。

 

 

さて、冒頭のフィギュアスケートの技を支える「スケート靴の機能」は、実はブレードのエッジという微細なところに内包されていることを見てきました。

 

「スケーティングがうまい」と言われる選手は、一蹴りであっという間にスピードに乗れる、と言われます。

 

これを言い換えると

 

蹴るときはしっかりと摩擦を得て、滑るときには摩擦を極力減らすためのエッジの使い方がうまい

 

とも言えます。フィギュアの審判はそういうところに注目しています。

あなたも、世界選手権でエッジの使い方に注目すると、より楽しめるのでは。

 

では、今日はこのくらいで。