みぢかを機能で考える

ISIDエンジニアリング・機能エンジニアが機能で考える開発について紹介します。

自律神経の機能と関連させて「ストレス」を考える

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現代社会はストレスが多くて不調の原因になる」ということがよく言われます。

 

では、この「ストレス」とは一体なんなのでしょうか?

「外部から働くプレッシャーのようなもの」と思われていませんか?

実は外部から働くものは「ストレッサー」と定義されています。

「ストレッサー」とは・・・「ストレスを発生させるべく働きかけるもの」という意味です。

 

ストレスの語源は、物理用語の「応力(Stress)」と言われています。

これは外から来る力(F)に対応して、物体の内部に発生する「単位面積当たりの力(σ)」です。

カナダの生理学者セリエが、これを生物に当てはめて、「外部からの刺激(ストレッサー)に対する体の反応」のことを「ストレス反応」と名付けました。

従い、同じような刺激やプレッシャーを受けても、それに対してどのように反応するか(ストレスを感じるか)は、その人次第で違ってきます。

 

・・・という風に書いているのが一般的な書物ですが、ここは「みぢかを機能で考える」コラムですので、このままではいけません。なにがいけないのかというと、「ストレスを発生する」という機能を考えても、それがブラックボックスのままなのがいけないのです。

 

上の説明を機能ブロック図で描いてみると、下図のようになります。

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この「ストレスを発生する」機能を分解してみようと思っても、どうも解りにくいですね…。

そもそも、私たちの体に「ストレスを発生させよう」などという働きがあるのでしょうか?

 

ここで、以前におはなしした「自律神経の機能」をふたたび考えてみましょう。

「成人が恒常性を持って自分自身を維持しながら活動する」という人の体の機能を制御(調整)しているのが、自律神経の機能であり、「活動的」にする「交感神経」やアドレナリンと、「休養的」にする「副交感神経」やセロトニンという、互いに逆の働きをうまくバランスさせて、あるときには交感神経優位に、またあるときには副交感神経優位にすることで、「活動と休養」という同時にはできない働きを使い分けているというおはなしをしました。

 

このバランスが崩れた状態、特に「交感神経を優位にする必要がないのにそうなってしまっている状態」のことを「ストレス状態」と呼んでいるのではないか、と仮説を立ててみます。

そうすると「ストレスを発生する」と書いてブラックボックスになっていたブロックの中身が見えてくる気がします。

 

すなわち、

 

「ストレッサーは、自律神経システムにとっての外乱であり、この外乱によって自律神経の制御が乱れているのが、ストレス状態である」

 

ということです。ブロック図に書くと以下のようになります。

 

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このように書くと、梅雨の時や低気圧の時に体調が悪い人がいる、ということも説明できそうです。自律神経の統括がうまくできず、ホルモンの分泌をうまく働かせていないと考えると、結局は自律神経システムを乱していることが納得できます。

 

ストレスと関連して「不定愁訴」という言葉がありますが、これは

「今の医学の検査方法では原因が特定できない愁訴」

という意味であって、実は自律神経システムの乱れを計測できないから、そのように言われるだけだと私は考えています。もう少し医学が進んで、自律神経システムの乱れを計測できるようになると、これらもきちんと対応できるようになるのではないでしょうか。

 

さて、このように「外乱で本来の働きが阻害される」という考え方は、製造業における「不具合対策」を講じるときにも有効です。

 

不具合を解決しようとすると、「不具合の原因」を探る必要がありますが、その際に「機能」の考え方にこだわりすぎてしまい「不具合を発生させる機能」などと考えられる方をお見受けすることがあります。

すると「何が不具合か」を定義しなくてはならなくなって、不具合の可能性を無限に考えなければならなくなります。これではきりがありませんので有効な対策が出てきにくいのです。

 

それよりも

 

「本来の機能が損なわれた状態が『不具合』である」と考えることによって、意識を「不具合対策」から「本来の機能の回復」に移すことができます。

そうすると「本来の機能を果たすためには別の方法もあるではないか」と気づく場合があって、それを実行できると、元の方法に付随していた不具合を根本的になくすこともできるのです。

 

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話をストレスに戻しましょう。

 

ストレス対策と一般的に呼ばれている方法は、

1.仕事の量・内容・種類を調整したり、周りが気を遣ったりすることで、その人の本来の力を発揮させる

2.瞑想・リラクゼーションなどによって、副交感神経を優位にする

のいずれかの方法が多いと思います。

 

これらは、さきほどからお話している自律神経システムへの「外乱」という見方で表現すると、

1は、「その場の外乱を取り除く」

2は、「逆の外乱を与えてバランスを取る」

 

ということになり、いずれも「今、自律神経の調整が乱れている状態を元に戻すために外乱を変える方法」と言えます。

 

もう一つの別な方法を考えると、「自律神経システムが外乱によって乱されにくくする」ことが有効であろうと思います。

 

例えば、武道やスポーツなどで「体と同時に心を鍛える」などと言いますが、この「心を鍛える」ということは、極度に緊張を強いられる場に普段から身を置くことで、そうした外乱に慣れる、すなわち外乱に動じない自律神経システムを作り上げることではないでしょうか。

これは、自律神経システムの働きを鈍くすることを言いたいのではありません。必要なときに必要なだけ自律神経を働かせればいいのであって、それを過剰に働かせないということです。実際、優れた武道家やスポーツ選手は、試合の時に適度な緊張を持って、アドレナリンを出しているといわれています。アドレナリンは決して敵ではないのです。

 

ただし、こうした境地に達するにはいくつかポイントがありそうです:

 

・自信を持てる実力をつける

これが一番重要なことだと思っています。例えば、「仕事に必要な知識を身につけなければならない」場合に自分の専門外、初めての分野の勉強をしなくてはならないことも往々にしてあります。

そのときに勉強が不十分で仕事に生かせないと、自信が持てなくなりその仕事に対することがストレスとなります。

・・・スポーツの世界で「練習は裏切らない」とか「人一倍練習してきたことが自信につながる」などと言いますが、仕事でも同じですね。

 

・状況を俯瞰できるようになる

これもある程度の経験があって初めて可能かもしれませんが、物事を俯瞰してみる考え方は有効だと思います。

例えば、要求がやたらに多い顧客がいたとして、ただ「困った、どうすればいい?イライラするなあ」と思うのではなく、その相手がなぜ口うるさく言うのかを相手の身になって考えてみるのです。

例えば「彼も業績を上げないといけないというプレッシャーで焦っているのかなぁ」とか「上司からいろいろ言われているに違いない」とか、その状況の背景を考えることができるようになると冷静に対処ができるようになってくるのではないでしょうか。

 

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今の世の中は、とかく「即効性」とか「楽に○○ができる」という方法がもてはやされて、「自律神経システムが外乱によって乱されにくくする」というような時間と労力のかかる方法は敬遠されがちです。しかし、時間がかかるからこそ、一度身につけると長く効果を発揮するとも言えますね。

 

さて、この気持ちのいい季節に、ひとつ武道でも始めてみましょうか。