みぢかを機能で考える

ISIDエンジニアリング・機能エンジニアが機能で考える開発について紹介します。

早実・清宮選手や広陵・中村選手は金属バット不要!?

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夏の甲子園というと殆どの方が高校野球のことを思い浮かべられると思います。正式には全国高等学校野球選手権大会というようですが、(ちなみに春は選抜高等学校野球大会)今年の夏で99回、来年は100回目の節目を迎えます。

 

冒頭、名前を出させてもらった両選手はいずれもホームランで話題をさらった選手です。清宮選手は残念ながら今年は甲子園にはいけませんでしたが…。

 

ホームランといえば、今大会は過去最高のホームラン数となり、68本ものが出たとのことです。

高校野球といえば金属バットを使っています。木製のものと比べると反発力が大きく、定性的には飛距離は伸びる方向=ホームランがでやすいといえるでしょう。

 

金属バットが高校野球に導入されたのは1974年だそうです。但しその年から急にホームランが増えたわけではありません。そのころは大会通算で10本余りだったようです。

当時とは体格・体力も違うでしょうし、技術も上がっているでしょう。甲子園球場ラッキーゾーンが廃止されたときはさすがにホームランは減ったようですが、今やそんなことは関係ないぐらいまたホームラン数は増えてきました。

 

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こんなにホームランがでるなら金属バットはそろそろ止めたほうがいいのでは…?と思ってしまいますが、ちょっと待ってください、そもそも何のために高校野球大会では金属バットを導入したのでしょうか。

 

木製はどうしても折れてしまうので、買い換えると費用がかさむ、負担を軽減するために導入をしたようです。プロとは違いますから、経費はより抑える必要がありますよね。

 

金属バットは木製バットと比較すると以下のような特徴があります:

  • 芯がない、というより芯が広いというべきなのかもしれませんが、打ってボールを遠くに飛ばすことの出来るスイートスポットが広い。
  • 折れない(正確には破損・変形しにくいというべきでしょう)
  • 吸収したエネルギーをあまりロズせずに、反対向きの運動エネルギーに変換する効率が高い(減衰が小さい)
  • 軽い

 

折れないバットを構成しようとしたら、結果的にその材質と構造により遠くへ飛ばしやすいバットになってしまったということなのでしょう。

 

プロでは金属バットは試合では使いませんが、試合前の練習で選手が使っているのをみたことがあります。  キャンプでは技術を磨くので使わないでしょうけれど、試合前はウォーミングアップなので、バットを折りたくないって言うことなのかもしれません。

 

プロの場合は、技術もパワーも更に高いレベルにあるので金属バットにすると、遠くへ飛ばしやすいということが、ホームラン増加、野球の質を変えてしまうとか、打球のスピードが上がりすぎて、危険度が増すとか(特にピッチャーの場合はよけられない)いう問題が発生しかねないようです。

また、木のほうがしなりとか、形状の微妙な調整により、選手にとってより扱いやすいものにできるのかもしれません。

 

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バットはピッチャーが投げた球を打ち返す道具です。それはプロも高校野球も変わりません。しかし、打ち返すために必要とされる機能を「ボールの運動エネルギーを受け止め、それを逆向きの運動エネルギーに変換する」とすると、人間の手、腕、体を含めて、如何にその機能を高いレベルで実現するのかが、バッターとしての技術と言えそうです。そして

  • プロの場合は基本機能を如何にうまく実現するのか、そこに重点がおかれる
  • 高校野球では、基本機能を容易に一定のレベルにして、その基本機能を継続的に維持していくことに重点が置かれている

といえそうです。

このように同じ機能でも、目的や機能に求められる水準の違いにより、材質や構造がきまってくるのです。 決して金属製のバットを作りたかったわけではないと思っています。

今は金属ですが、木製と同じような特性をもつ、構造や材料が出現してくれば、そういうものに変わってくる可能性があるのでしょうね。

 

ところで、今回、金属と木のバットの機能の話をしましたが、モノの話をする時に、忘れてはならないのがライフサイクルの観点だと考えています。 材料から加工、組み立てを行いモノの形を作る、用済みになったら、そのモノを自然に帰すことが出来る形で廃棄する、こういったプロセスの中でエネルギーを如何に有効活用するのかという視点です。

金属のバットのほうが、材料・加工・廃棄にエネルギーを使いそうですが、木のバットは折れるので材料・加工・廃棄のサイクルは速そうですね…。

地球に優しいのはどっち?